スタッフブログ by Tomoko Shimo
先日、非常勤講師を務める大学の教務室でコピーをしようとしたとき、カミキリムシをひと回り小さくしたような謎の虫が機械の中を這っていました。
「わっ!」という私の声を聞いて、事務の方が紙を手にすぐに来てくれました。そして、「こっちよ、そっち行っちゃだめよ。そうそう、こっち」と優しく虫に話しかけながら紙の上に誘導し、その虫を窓の外に逃がしてあげたのです。
紙に包んでポイっとゴミ箱に捨てるのかな、と思っていた私は驚きつつも、「なるほど、すてきな対応……」と感心しました。
翌週、同じ教務室で、事務用品入れを取ろうとしたとき、横に昆虫ケースが置かれているのに気が付きました。覗いてみると、なんと、あの謎の虫が何匹も入っていたのです。
「えっ……!」
思わず声をあげてしまうと、
「あっ、驚かせてしまってすみません!この虫、もしかしたら新種かもしれないってN先生がおっしゃって、しばらく観察されてたんです」
と、笑いながらおしえてくれました。
「よく教育するとはよく生活させること」という理念のもと、24時間の生活すべてを学びの場と考えているこの学校には、その模範となる大人たちがいるのだなと知りました。
気持ち悪いと虫をすぐに退治するのではなく、そのいのちに興味を抱き、慈しむ……。その姿は、どんな立派な講義にも勝って、学生たちの記憶に残ることでしょう。
そういえば以前、
「この学校で誇れるものってなに?」
と、授業中尋ねたら
「ものではなくて、人です!」
そう、答えてくれた学生がいたなと、彼のキリっとした表情を思い出しました。