アメリカ留学

「コーヒーでも飲んで……」

スタッフブログ by Tomoko Shimo

 みなさんにとって、「人生が動いた日」と言える日がありますか?
いくつかの日が思い出される人もいるでしょうね。
私にとって、大きく人生が動いたなと思う日。それは、留学したい気持ちを初めて親に切り出した、19歳のある日です。

日本の大学に進学する予定で受験勉強している中で、本当に今自分がしたいことは、アメリカ留学なのだと、自分の中では気持ちが固まっていました。でも、どうしたら留学できるかもよくわからず、とにかく父に話さなければと、機会を伺っていました。
父が帰宅する時刻に最寄駅の改札で待っては、顔が遠くに見えた途端、柱の陰に隠れたり、書いた手紙を渡そうと持ち歩くも、渡す勇気がなかったり…… ただただ時間だけが過ぎていきました。
ある日、何か気配を感じた母が、「あなた、最近何を考えているの?」と問い詰めてきました。今しか言い出す機会はないと、アメリカの大学に進学したいとはじめて口にしたのです。
次の瞬間、「そんな馬鹿げたこと、どうやってお父さんに言うの!」と母の怒りは爆発しました。

いたたまれずに家を飛びだした私は、その足でレイコさんを訪ねたのです。レイコさんは、アメリカの大学で出会ったご主人と英会話教室をされている方で、父も私もそこに通っていました。彼女の雰囲気はどこか他の大人たちとは違い、あこがれていた女性でした。
突然の訪問にもかかわらず、レイコさんは私をやさしく招き入れ、真剣に耳を傾けてくれました。そして、「私にできたのだから、大丈夫よ。でも、お父様に経済的に支えてもらえるように説得してね。私にできることは何でも手伝うわ」と、言ってくれました。そして、「コーヒーでも飲んで、ゆっくり考えてね」と送り出してくれたのです。

「コーヒーでも飲んで……」ということばに、自分を大人として見てくれたような気がして、19歳の私はとても嬉しかったことを、今も覚えています。
その後、父が私の願いを受けとめ、全面的にサポートしてくれたことで、アメリカ留学への道が開けました。

もう一度あの日に戻りたくはないけれど、まさに人生が大きく動いた日といえるでしょう。
コーヒーの香と共に、今でも夢に向かって飛び立つ前の葛藤や、支えてくれた人たちの愛を思い出すのです。