「何度でも手をかけることだ。そこに愛情が生まれるものだよ。ほうっておいてはいけない。人でも物でも、ほうっておいては、持っていた愛情も消えてしまう」
三浦綾子さんの『続 氷点』の中で、主人公陽子の祖父が語ったことばです。陽子の母である娘から届いた木彫りの熊を、送られた日から毎日、おじいさんは朝に夕に布で丹念に磨いていたのです。
娘が自分のために買ってくれたプレゼント。自分を思ってあれこれと悩み、選んでくれた……。その気持ちが嬉しくしょうがなかったのでしょう。木彫りの熊を磨くたびに、きっと娘を想い「元気でな。今日も幸せでな」と心の中で語りかけていたことでしょう。人でも、物でも、ほうっておいてはいけない。心に刺さることばです。
聖書の中の“愛”ということばを、初期の翻訳者は“御大切にする”と訳したそうです。“愛する”と聞くとあまりにも壮大で、分かりづらくても、“大切にする”と聞けば、具体的に何をしたらいいかわかりやすいですね。
慌ただしいこの季節、大切なものをほうっておくことがないように、心に留めて過ごしたいですね。
(霜)